ケースファイル1076 一匹の奇妙な獣(ein eigentumliches Tier)事件について 本件はレネゲイドの力を宿した絵の具(以下、EXレネゲイドAと表記)により描かれた絵画から 自我を持った絵画『熱泥に眠るカトブレパス』からレネゲイドビーイングと思われる幻想生物が発生。 一般人に危害を加えた一連の事件に関する報告書である。 熱泥に眠るカトブレパスはEXレネゲイドAを使い、狂気に駆られた画家ジョルジュ・デミアールが 三週間に渡り一心不乱に描いた彼の遺作である。 遺作になったのも、絵画の前で八つ裂きにされて死亡していたジョルジュが見つかったからであり、 画商はこれを曰く付き、呪われた絵画として画廊に置いたのが全ての始まりだった。 画廊で、人が、死ぬ。 それも夜ごとに。 画商はジョルジュの呪いを恐れ、この絵画を手放した。 一般人にはEXレネゲイドAはもちろん、レネゲイドに起因する全てを理解はできない。 そして日本に渡ってきたこの絵画は、またも死をばら撒くことになる。 この時点でUGNが捜査に乗り出し、以下のメンバーを選出し、 現時点で熱泥に眠るカトブレパスを展示している S市にある美術館『県立ワンダーアート美術館』の調査を開始した。 郡界橋 一晴(高校生/UGNイリーガル) 浅薙 鉄郎(高校生/UGNエージェント見習い) 戸鞠 カンナ(記者/UGN協力者) 篠塚 アキラ(何でも屋/フリーランス) 福良 茉菜実(保育士/UGNエージェント) 小鞠 桜(筆者につき別文書Aを参照) 調査については別文書Bを参照。 特筆するならば、篠塚アキラは裏事情に詳しく、 動物を使った調査もかなり効率的だった。 今後の評価に一考の余地がある。 途中、FHエージェント“ディアボロス”の妨害工作に遭う。 夕暮れの湾港にて戦闘し、これを撃退。 ワーディングの展開と周囲への被害・物損に関しては別文書Cを参照。 戦闘後の処理は戸鞠カンナの手腕である。 ノイマンの性質が強く出たロジカルな遂行は今後の彼女の評価軸となるだろう。 夜の美術館に侵入したメンバーは、動き出す美術品や絵画を目の当たりにする。 それは最早異界とも言える異様な光景だった。 既にEXレネゲイドAは他の作品にも影響を与えている。 一刻も早く熱泥に眠るカトブレパスを破壊しなければ 美術館が地図から消えることもあり得ると考えたメンバーは その夜の間に美術館を調査。 呪われた絵画と対面することになる。 絵画から這い出た獣、カトブレパス。 それが語ったのは、孤独だった。 世界で一匹。他に同じ種は存在しない幻想。 記憶はないが本能により造物主を殺害した自分は。 永遠に“一匹の奇妙な獣”であるしかないのだ、と。 (実際のやり取りに関してはレコーダーで記録、ファイル1J-7から) なおも人を害そうとするカトブレパスを福良茉菜実は説得。 しかしジャームと思われる獣に正常な関係を築けるはずもなく失敗。 23:12に交戦開始。 戦闘は苛烈を極めた。 詳細に関しては別文書Dを参照。 なお、独自の戦闘センスと誤認している可能性はあるが郡界橋一晴は恐らく起源種と思われる。 23:14、カトブレパスの攻撃を福良茉菜実が時の棺でシャットダウンさせた。 (その際、敵の攻撃が終了した時間軸に繋げたようにも視えたが委細不明、今後の調査が待たれる) その隙に浅薙鉄郎の攻撃がカトブレパスを打ち抜き、カトブレパスは死亡した。 念の為、カトブレパスがいなくなった不自然な状態の絵画を焼却。 EXレネゲイドAの影響から脱した美術館は。 静けさを取り戻した。 絵画が無くなったことに対する公に向けるカバーストーリーを今後、小鞠桜が担当する。 本件に関して、一切が呪いに起因するものである。 それはジョルジュの我執であり、所在がわからない画材EXレネゲイドAであり、 人と関わることに絶望したカトブレパスの感情であり、 レネゲイドそのものである。 ただ、ただ。普通でいられないことは呪わしい。 そう感じざるを得ない。 以上が一匹の奇妙な獣事件の顛末である。 (なお、筆者はメンバーの観察のため終電がなくなったことを理由に彼らをファミレスに呼び止めた) (別文書Eを参照されたし)