「─────────おなかすいた…」 龍ヶ崎焚竜の朝は早い。 大抵は空腹に無理やり眠りから引き上げられる。 いつもはその辺に生えている肉か、捕まえやすい幼年期を喰らうのだが、その日は違った。 「おやァ、起きたかい。」 彼の体は、蜘蛛の糸で逆さ吊りにされていた。 「…誰、おばさん。」 「アンタみたいな人間の子供が無防備に寝てるとねェ…悪いデジモンの”お姉さん”に取って食われちうまうんだよォ!!」 焚竜の不躾な質問にムッとしながら、アルケニモンは彼に手を伸ばす。 「ぎゃあァァァァ!!!!??」 しかし、アルケニモンは彼に指一本触れることすら叶わなかった。 「進化。」 焚竜の体を黒い炎が包み込み、蜘蛛の巣が焼け落ちる。 炎はそのまま人型になり、赤い一つ目が炎の中から覗く。 「ブラックアグニモン!」 彼はそう叫ぶとともに、アルケニモンに掴み掛かった。 「相手の強さも測れないのに、よくデジタルワールドで生きてこられたね。」 「ガッ…かはっ!…アンタ…子供だったんじゃ…!」 「……。」 彼女の発言が気に障ったのか、ブラックアグニモンは無言で炎を片手に集め、剣を作り出した。 「子供!子供って!大人は!いつも!そうだ!!」 「まっ…テっ……ゔッ………──────── その剣で、彼は何度も敵を貫いた。 「大人は!いつも!そうやって!ぼくの!ことを!縛って!」 相手が動かなくなろうと、何度も。 「子供で!何が!悪いんだ!!」 何度も、何度も。 「子供!だからって!大人に!従わなきゃ!いけない!わけ!じゃ!!ない!!!」 何度も、何度も、何度も。 「大人!!なんて!!!嫌いだ!!!!」 彼の気が済む頃には辺り一面が黒い炎の海となり、アルケニモンはもはや跡形もなかった。 「……やりすぎちゃった。これじゃ食べるところ残ってないや。」 人の姿に変わった焚竜は、そう呟いた。 ───────── 「まって…やめて…!ころさないで…!」 「うるさいなぁ…弱いんだから大人しく食べられてよ。」 焚竜はそう言って目の前にいた幼年期デジモンを捕まえると、その腹に齧り付いた。 「……あんまり美味しくないな。それに少ないし」 アルケニモンを容易く屠るだけの力を出せば、当然腹が減る。 ましてや寝起きであったのだから当然だ。 「おなかすいたなぁ…」 食欲の赴くままにデジタルワールドを放浪し、闘争本能の赴くままに戦う。 彼はもう何年も何年もそうして暮らしていた。 だからこそ、選ばれし子供と出会ったことは、ある意味彼にとって僥倖だったとも言える。 彼は、デジモンではない”新たな遊び相手”を見つけたのだから。 ━━━━━━━━━ おまけ 龍ヶ崎焚竜のデジ食レポ ・デジ肉 「その辺に生えてるから一番食べやすい。でもこればっかりだと飽きるんだよね」 ・デジノワ 「ほぼお菓子。食べてるとちょっとだけ帰りたくなる。」 ・デジマス 「水場で黒い炎を使うとたくさん浮いてくる。でもこれで獲ると火が通っちゃうからお刺身にできないんだよね。」 ・トコモン 「いっぱいいるし、逃げ足が遅いから捕まえやすい。やわらかくて食べやすいけど小さいから、すぐお腹が空く。たまにXってついてるやつがいるけど、それも結構おいしい。」 ・クネモン 「硬い殻がないから食べやすい。パチパチした味がする。緑のよく似たやつがいるけど、そいつを食べたらしばらく体がダルくなった。」 ・ゴツモン 「食べられない…こともない。あごが痛くなる。」 ・ガニモン 「殻を剥くのがめんどくさい…カニに味が似てるのかな?カニカマしか食べたことないからわかんない…」 ・シャコモン 「殻ごと焼いて、口が開いたら食べごろ。歯応えがあって美味しい。」 ・シェルモン 「引っこ抜いて貝殻に隠れてるところを食べる。奥の方には苦いところがあるから、そこは食べない。あと緑色のやつは土くさい。」 ・ハニービーモン 「甘くて美味しい!飛んでるから捕まえるのが大変だけど、それだけの価値はあるよ。」 ・ユキダルモン 「ハニービーモンの蜜をかけて食べるとかき氷みたいで美味しい。お腹はいっぱいにならないけど…」 ・カブテリモン 「殻ばっかりで食べるところがあんまりない。」 ・トリケラモン 「強いけど、大きくて食べるところがたくさんあるから戦う価値はある。黒い炎で焼くと黒コゲになるから、真ん中の方だけ食べる。」 ・キウイモン 「フルーツなのかと思って食べてみたら普通に鳥だった…」 ・ヨークモン 「そのまま飲んでもいいし、何かにかけてもいい。万能。」 ・ジュレイモン 「頭の実がおいしそうだったから食べてみたら死んだ。今度は食べない。」 ・ベジーモン 「甘い匂いがしたから行ってみたら野菜だった。ムカついて燃やした。」 ・ケレスモン&バッカスモン 「こっちもおいしそうな匂いがしたから襲いに行ったらボコボコにされて死んだ。あの実食べたかったなぁ…」 ・オクタモン 「ほぼタコ。結構おいしいけど、泳ぐの得意じゃないからあんまり食べられない。」 ・スカルグレイモン 「骨じゃん…食べるとこないよ…」 ・もらったチョコレート 「美味しかった!!!…そういえば何だったんだろうあの人。」