どぽり、どぽりと粘ついた水音が牢内に響く。肌の上で爆ぜる音、胎の中にて跳ねる音。 絶え間なく響く嬌声は、水音とまた別の音――肉と肉のぶつかる生々しい音によって、 一層激しく、甘ささえ纏った甲高いものへと変わっていく――だがその中心にいる女は、 周囲の雄たちによって与えられる刺激を悦ぶどころか、抗うのにいっぱいいっぱいの様子だ。 自分の意志では止められぬ声を――それでも何とかして抑え込もう、というのが、 彼女に与えられた唯一の自由であり、反抗の意を彼らに示すものである。 けれど、蕩けきった声は意志に反して無制限にひたすら絞り出されてくる。 順番待ちをする男は、我慢ができなくなったという風に自身の性器を扱き上げ、 彼女の白い肌の上に、黄色く濁った生臭い精液をびちゃびちゃひっかける。 その感覚だけで絶頂に達してしまうように作り変わった彼女の身体は締まりを強め、 今まさに、全箇所が性感帯と等しくなった膣内を擦り上げている男の性器に吸い付く。 するとたちまちに、その男もまた彼女の子宮目掛けて真新しい精を吐くのだった――当然、 直に熱を受けた子宮壁は感動に打ち震え、喉から甘ったるい声を吐き出させる。 口ではやめろと言いつつも、射精されるたびにそんな反応をしていては形無しだ。 男のうちの一人が、誰かの――もしかしたら自分の――放った精でべとべとの彼女の肌に、 暗緑色の掌をぱしん、と打ち付けて、精を塗り込むように擦り回した。 平手打ちの痛みに女の身体は軽く震えたが、そこにさらに、ねとねとした感覚を乗せられ―― 火照った箇所を、生臭い粘液によってゆっくりゆっくりと冷まされていくその感触に、 自身の細胞の全てが、雄の精によって侵食されていくかのような錯覚を感じる。 そしてまた、ひくひくと膣肉を蠢かせて雄を絞り――胎に受けて、絶頂することの繰り返し。 彼女の両手は、壁に打たれた鉄の輪を握るためだけにしか使われていない。 そちらに握力と意識を集中させることによって、常に自分を引き込もうとしてくる、 快楽、暴力、屈服への衝動――そういったものに流されまいとしているのである。 そうでなければ、初日にそうされたように――そして思い知らされたように―― 同じ牢内にいる何十人もの男たちに文字通り回され続けて天地の境すらもあやふやになり、 まともに立つことすら危うくなるような状況へと追い込まれてしまうに違いないのだ。 男たちからしてみれば、獲物が自分から壁際の逃げ場のないところに留まってくれるのだから、 これはこれで都合がいい――ぼろきれのようになった肉便器を、 足元に目を凝らして拾い上げなくてもいい、という合理的な理由もそこに成立する。 女の顔には目隠しがされていた――が、たとえ外したところで大きな意味はなかったろう。 緑肌の、自分とは違う星系出身者たちが――しかも男ばかり――集められた牢内に、 ただ一人の地球人種の女として、性欲処理の道具として放り込まれている現状。 外したところで、碧い瞳には絶望しか映らない――だからこそ、自分から外すこともない。 付けている方がむしろ、ぷつん、と意識の途切れた時にも、心が疲れなくてすむ。 脱出の糸口さえないような今、どうして自分から彼らの顔のような醜いものを見ねばならぬ? 自身の身体が異様に“感じやすく”なっていることを、無論彼女の理性は悟っている。 その理由が――ここに放り込まれる前の、冷たい手術室の台の上、 麻酔の霧の向こうから聞こえてきた、男たちの言葉の中にあることを、覚えている。 そして――雄の精からしか栄養を摂れないようにされた彼女の肉体は、 ひたすら交尾を続けるこの雄たちに依存しなければ生命を繋ぐ事ができないことも。 犯されなければ、生きていられない。だがそれを自分から望みたくはない。 脱出したところで、継続的に雄の精を受けるためだけに身体を売るなど―― しかし、死にたいわけでもない。でも――と、堂々巡りに陥っているうちに、 雄はこの肌の白く、黄金色に輝く髪を持つ美しい雌を孕ませんと犯し始め、 雌としての部分がそれに応えてしまうのだ――彼女の無意味な葛藤を脇に置いて。 今や彼女の肌のどこにも、雄の精の掛かっていないところはない。内側にも、だ。 口の中、鼻の中、喉の奥、尻の穴、臍。あらゆる箇所に精をぶちまけられ、塗りたくられて、 それぞれから上がってくる臭いと味とが、五感をふらふらと酔わせてくる。 それを、芳しく、甘いと感じ始めている自分を否定できなくなっている―― そんな風に女がちょっとでも呆けると、雄はまた強烈に彼女の肌に赤い手の跡を残し、 念入りに念入りに、肌の奥の奥まで精液を塗りたくり――押し付けてくるのであった。 無論膣内にも、それ以上にしつこく、精を放たれ続ける――妊娠したくない、と思っていても、 彼女の身体は既に精神を置いてけぼりにして、屈服してしまっているのだ。 当然、卵子も子宮も――雄の求めのままに、己の役割を果たしてしまうのである。 丸々と膨らんだ孕み腹、大きさは既に臨月大に達し、なお彼女は雄の精に溺れている。 否――溺れさせてくれるよう、むしろ自ら尻を振り腰をくねらせ、ねだってすらいる。 彼らに屈したのではない。己の身体の中にもう一つの生命の在ることを察したとき―― その生命が得る栄養もまた、自分の身体を通してしか与えられないこと、 すなわち、自分が雄に媚びて“生かされ”ない限り、この子を“生かす”こともできぬのだと、 彼女の母親としての本能は理解してしまった。そして我が子を見捨てられない自分に―― 雄たちが、身重の自分に少しく“飽きて”来ていることを、彼女は空腹感から察していた。 それはつまり、妊娠が進み、腹が大きくなればなるほど――自分自身の栄養も、 赤子に回すための栄養も、不足していくことを意味している。だからこそ、 彼女は自分だけでなく赤子の生命を繋ぐために、雄に精液を賜らなければならなかった。 妊娠によって一層大きくなった乳を下品にぶらぶらと揺らしてみせたり、 肉のついた尻を彼らの股間に押し付けてみせたり、黒く染まってしまった乳首を咥えて、 乳のたっぷりと出せるよい雌であることを示してみせたり――あらゆることをした。 彼らが望むなら、両手を頭の上に回してがに股の格好で踊ることさえ厭わなかった。 雄たちは、自分の精によって彼女が生き繋いでいることなど知る由もないから、 出産間近というのに、みっともなく交尾をねだる女のことを酷く馬鹿にし、 彼女の求めてやまない生命の雫を――顔にべちゃり、と引っ掛けてやるだけにとどめ、 中々、膣内に射精してはくれないのである――すると彼女は一層必死になって、 膨らんだ胎を守りながらも、手近な雄に身体をべたべたくっつけて、交尾をねだるのだ。 例の手すりを産み綱代わりに握って、女はいきむ――散々に押し拡げられた膣口は、 真っ黒になった陰唇との区別がなくなるほどに痛々しく伸ばされて、内からのものを通す。 産むことに全力を注いでいる彼女の乳首からは、ぼたぼたと母乳が垂れ流れていて、 それを雄たちは、湧き水ででもあるかのように手のひらの上で跳ねさせて遊んだり、 その蛇口である乳首を、横から乱暴にぎゅっと握って捻って、握り潰したりもする。 すると散々に躾けられた身体はひくひくと膣肉を蠢かせて、赤子の頭をまた吸い込んでしまう。 いきみ直しになっても、彼女にはその無体を糾弾するだけの余力はどこにもない。 一年かけて育てた赤子を、なんとか身体の外に出してやらなければならない、その想いだけ。 牢の中には、彼女以外に赤子を育てようなどという者は誰一人いない。 それは妊娠中に引き続き、その娘の生命を残してやろうとするならば、 与えるための母乳――に回すための栄養――を、彼女がまた余分に得ることを意味している。 胎の空いてすぐは、今度こそ自分の子を産ませてやろうと狙う雄が群れてきたが、 再度の臨月時にはまた手が離れ――いまだ乳離れせぬ子のためにも一層の精が必要になった。 そしてそれをなんとか凌いだと思えば、第二子の分も――胎の中の第三子も――だ。 男たちの爪によって彫られた画線は、既に二つ目の図形に移ろうとしている。 母親譲りの金髪と、父親譲りの緑肌の赤子の数と同じだけの、痛々しい跡。 自分と弟妹のために、延々と精をねだる母親の姿を、産まれた時からずっと見続ける子らの。